地下室・半地下室とは?容積緩和のメリット、工事費用・事例を紹介

地下室と聞くと、音楽室や倉庫などの利用に適しているが、コストが高くなるイメージがあるでしょうか。地下室をうまく作ると、かけたコスト以上のメリットを得ることが出来ます。

この記事では、具体的な事例や工事費を交えながら、地下室のメリットや特徴を解説します。

地下室・半地下室とは?

地下室とは、地階にある室を指します。建築基準法では、地階を「床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの三分の一以上のもの」と定義しています。(建築基準法施行令第1条二

(作成:長沼アーキテクツ)

天井高さの1/3以上が地盤より埋まっている階は地階となるため、部屋すべてが地盤に埋まっていなくても地階にある室(地下室)とみなすことが出来ます。

地下室には、全地下室と半地下室の2種類があります。

全地下室は部屋すべてが地盤に埋まっている

部屋がすべて地盤に埋まっている全地下室のメリットは、遮音性や断熱性が高いことです。音を出す音楽室や、一定室温に保ちたい楽器やワインなどの保管に適しています。

地下室は鉄筋コンクリート造で作られるため、屋外に音を伝えにくい構造です。さらにすべて地盤に埋まっているため、外部への音の伝わりを抑えることが出来ます。

土の中は温度変化が少なく、外気温度の影響を受けにくいです。よって適切な断熱材を施工することで、安定的な室温を保つことが可能となります。

全地下室のデメリットは、採光や換気が取りにくいことです。

全地下室は外気に接する壁面がないため、窓を作ることが出来ません。よって窓からの自然光や換気を確保できず、換気は機械で行うこととなります。

全地下室には窓を作ることはできませんが、例えば音楽室など防音性を重視した使い方に適しています。

半地下室は部屋の一部が地上に出ている

地階の定義から、地上に天井高さの2/3未満まで出ていても、地階にある室とみなされます。このように一部が地上に出ている室を、半地下室と呼びます。

(作成:長沼アーキテクツ)

半地下室のメリットは、地上に出ている壁に窓を設け、そこから自然採光と換気を得られることです。これにより明るい音楽室などを作ることが出来ます。

半地下室のデメリットは、遮音や断熱対策が必要になる点です。

部屋の一部が地上から出ているため、もし半地下室を音楽室にした場合など、地上に出ている部分の遮音対策が必要となります。

また半地下室は部分によって接する外気温に違いがあります。地上に出ている部分は、寒暖差のある外部環境に適した断熱を施工する必要があります。

半地下室は、地下室のメリットである防音性や室内環境の安定性を得つつも、地上部から採光や換気できる点です。例えば個室など過ごす時間の長い部屋に、適しています。

ドライエリアを設ける

ドライエリアとは、地下室に開口を設けるための空堀のことです。全地下室にも半地下室にも設けることができます。

(作成:長沼アーキテクツ)

ドライエリアを設けるメリットは、地下室に窓を付けることが可能となり、自然採光や換気を得ることが出来ます。明るい地下室にすることが出来ます。

デメリットは、雨水対策が必要になる点です。近年の豪雨でドライエリアに大量の雨が降った場合に、しっかり排水できなければ、地下室が浸水してしまいます。適切な排水経路とポンプの設置をする必要があります。

全地下室のデメリットに挙げた採光や換気を、ドライエリアからすることで、より環境のよい地下室になります。地下室のメリットを受けつつ、室内環境を良くするために、ドライエリアは最適です。

地下室の容積緩和とは?地階部分の不算入について解説

地下室は遮音性や断熱性など、室内環境にメリットがありますが、床面積の不算入というもう一つのメリットがあります。

敷地に対して建てられる床面積を、建築基準法では容積率で定めています。例えば100㎡の土地の容積率が200%だった場合、建てられる最大床面積は200㎡となります。

(作成:長沼アーキテクツ)

地下室で「地階にある、地盤からの高さが1m以内に天井が設けられた室」は、延床面積の1/3までを容積率の対象から除外することができます。

地階の判定で、2/3までは地盤から出てよかったですが、容積率から床面積を除外されるためには、地盤から1m以内に天井を設ける必要があります。

都心のように敷地が広くなく高額な場合に、地下室の容積率不算入を用いることで、土地のポテンシャルを最大限に活かすことが出来るのでオススメです。

例えば100㎡の土地で容積率が100%の場合、最大床面積は100㎡になります。ここに、1階50㎡+2階50㎡+地階50㎡=延床面積150㎡の建物は本来は建たないのですが、地階が容積率不算入の条件を満たしていた場合には、150/3=50㎡が延床面積から除外され、容積率対象床面積が100㎡となり、この土地に建築可能となります。

地価の高い都心では、地下室の費用対効果がより上がります。

例えば室内150㎡の建物をつくろうとして、土地の容積率が100%だった場合には、土地の広さは150㎡必要になります。上記の計算にあったように、地下室の容積率不算入を用いれば、土地の広さは100㎡ですみます。

都心で地価が高く、仮に坪200万円だったとすると、土地の広さを50㎡広くするための地価は、約3,000万円にもなります。加えて、地上部に木造建築を建てる場合の工事費は約90万円/坪ですので、50㎡の建物を建てる工事費は1,360万円です。合計で4,360万円が必要になります。

一方で地下室を作る坪単価は100~200万円ですので、仮に坪150万円の工事費とした場合には、50㎡の地下をつくる工事費は約2,270万円となります。地上に建てた場合の1,500万円よりは割高ですが、容積不算入が適用されて50㎡分が延床面積から除外されることを考慮すると、土地を広くする必要もないので、その分の土地代は不要になります。両者を比較すると、広い土地を購入して地上に建てるするよりも地下室を作る方が約2,090万円安くなります。

地価200万円/坪の土地に50㎡の部屋をつくる場合

50㎡を増築 50㎡の地下室を建築
土地代 200万円/坪 × 50㎡ = 3,000万円 0円
建物代 90万円/坪 × 50㎡ = 1,360万円 150万円/坪 × 50㎡ = 2,270万円
合計 4,360万円 2,270万円

地価が高い地域であるほど、地価と地下工事費の差額が広がり、地下室を作るメリットがあります。

地下室実現にかかる費用は?

地下室の工事は、地上に建てる通常の工事費よりも1.5~2倍のコストがかかります。私たちの実例でいえば、地上部の木造は坪80~100万円の工事費ですが、地下部は100~200万円程度になっています。

地下室の工事に高額な費用がかかる理由としては、手間と難易度の高い工事だからです。

地下室を作るためには、平らな地面を1階分の高さを掘って、土を搬出します。土を掘ったときに周りが崩れないように、土留を四方に設ける必要があります。さらに大量に発生する掘った土は、敷地内では処理できないので、土を処分する費用が発生します。

地下室は木造よりも単価の高い鉄筋コンクリート造で作るため、費用が上がります。さらに防水処理やポンプなど排水設備、防水処理など、地上の建物にはない設備を工事する必要があります。

地下室を作るために必要な工事

  • 土の掘削と搬出・処分
  • 土留
  • 鉄筋コンクリート造の地下躯体
  • 防水処理
  • 排水設備

地下室の工事は難易度が高いため、経験豊富な施工会社に依頼する必要があります。私たちも地下室がある計画では、過去の実績を確認して施工会社を選定しています。地下室に手慣れた職人さんに依頼するので、通常の工事よりも単価が上がります。

地上に建てる場合と比べて、地下室の工事費は高いのですが、上記の容積率不算入のメリットが大きく、地価の高い都心だと、費用対効果がより高くなるのでメリットがあります。

注文住宅の地下室事例と費用紹介

ここからは、地下室を設けた具体例を2つご紹介します。

ケース1:方南町の家の費用

「方南町の家」は敷地が狭く、お客様ご要望の部屋すべてを、法規による高さ制限内に納めることが困難でした。そこで1階の半分を半地下にすることをご提案しました。

1階の半地下部分に2部屋を作ることができたため、2階全体を広いLDKとし、3階に2部屋と水回りという、お客様のご要望すべてを実現することができました。

半地下の範囲を1階の半分のみとすることで、コスト上昇を抑えることができました。また全地下ではなく半地下としたのは、客室として使用する予定の地下室に自然光を入れるためです。

またもう1つの半地下室は、奥様がピアノ教室を将来開くことを想定しています。もともとは防音ブースを置く予定でしたが、地下室の防音効果が高いことをご説明したところ、地下室を防音室にすることとなりました。地下室の特徴を活かした計画となりました。

地下室部分の工事費坪単価は、120万円/坪となりました。地上の通常の木造部が、90万円/坪でしたから、約1.33倍の工事費となりました。

地下室を作る工事費はかかりますが、より広い室内空間を実現することが可能となり、地価の高い都心だからこそ、費用対効果の高い方法となります。

ケース2:東北沢の家の費用

「東北沢の家」の敷地は隣地よりも約2m高く、お客様が土地を購入した時点で、既存の擁壁が老朽化していました。住宅を新築する前に擁壁を作り替える必要がありました。

そこで私たちは、擁壁を作り替えるための土の掘削を利用して、地下室を作ることをご提案しました。地下室を作る際のデメリットとして、土の掘削による工事費の増額がありますが、擁壁工事と同時に地下室工事を行えば、掘削費用をメリットに活かせるのではと思ったためです。

擁壁のための掘削工事(山留め・根伐・残土処分等)で約600万円かかったので、この費用は地下室工事にはかからずに済みました。仮に擁壁の作り変えが無く、地下室を単独で作っていたら、かかっていた費用ですので、地下室工事からは約600万円のコスト削減となりました。

2方向の擁壁を作り替えるために、敷地の大部分を掘削する必要があったため、1階と同じ範囲を全地下室として計画しました。容積率対象外である地下室を作ることで、法規で定める容積率の上限以上の室内広さを実現することができました。

建設地の地価は、坪240万円でした。地下室26.9㎡分が容積不算入となりましたので、約1,950万円の費用対効果があったといえます。

地下室は、お客様の趣味である音楽演奏やワイン貯蔵など、防音と安定的な室内環境を活用した使い方となっています。

地下室のメリットを活用して、費用対効果の高い住宅を実現しよう

地下室にはコストがかかるイメージが多いですが、メリットをうまく活用すれば、費用対効果を高めつつ、理想の住宅を実現することができます。

  • 地下室には全地下室と半地下室があり、天井高さの1/3以上が地盤に埋まっていれば地下室になる
  • ドライエリアを設けることで、地下室に自然採光や換気を取り込むことができる
  • 地盤からの高さが1m以内に天井がある地下室は、延床面積の1/3までの面積を容積率の対象から除外できる
  • 地価の高い都心では、地下室の容積率不算入の費用対効果が高い

地下室といっても、全地下室と半地下室でコストや室内環境が異なります。また地下室を作ろうとする土地の状態(傾斜地だったり軟弱地盤、狭小地)によっても、施工難易度が異なり、コストに影響があります。

地下室は施工単価と難易度の高い工事ですが、土地代の高い都心などで、床面積を最大に取る方法として有効です。地下室の工事費より高い地価のエリアだと、費用対効果の高い方法なのでオススメです。

地上階より工事費は高くなりますが、その分の費用対効果があります。目的にあった環境の部屋を作れるメリットと比較して、採用するか検討してみてはいかがでしょうか。

長沼アーキテクツでは、コストとメリットをバランスさせる設計を得意としています。土地のポテンシャルを最大限に活かす計画をご希望でしたら、ぜひご相談下さい