地盤調査とは?調査の種類・費用、報告書の見方・住宅に必要な地耐力を紹介

住宅を建てる際、建物の安全性のために地盤調査が必要になります。どれだけ耐震性に優れた家を建てたとしても、地盤調査がおろそかにされた場合は、家の傾きや地盤沈下といった取り返しのつかないトラブルが発生してしまうおそれがあります。

地盤調査の方法には複数の種類があり、特徴や費用に違いがあります。それぞれの地盤調査の特徴、調査結果の見方や結果への対応方法の目安、かかるコストなどについて解説します。

地盤調査とは?

地盤調査とは、地盤の強さを正確に測るために行う調査です。調査は住宅の場合、土地が更地の状態で、建物を着工する前に行います。調査結果によっては、基礎の方式や地盤改良など、建物の計画に影響するためです。

地盤とは、建物が立つ土地のことをいいます。地盤の強さは目に見えず、たとえ今まで建っていた建物に問題がなかったとしても、地盤調査をしてみないと、本当の強さはわかりません。

地盤調査は、設計者もしくは工事施工者が調査会社へ依頼します。調査結果とそれに対する計画は、設計者や工事施工者から建築主に説明されます。

土地購入前に地盤の強弱を把握するには?

地盤の強さは地盤調査をしなければわかりませんが、地盤調査をするためには土地のどの部分にどのような建物が建てられるかがわかっている必要があります。土地を購入し、建築家が実際に設計をしたあと、はじめて地盤調査が可能になります。

つまり、正確な地盤の強さを把握できない状態で、土地を購入することになります。土地を購入する際に心配に思われる方も多くいるのではないでしょうか。

土地を購入する前に地盤の状態を把握する方法があります。それは、土地のある地方自治体の役所にある資料を閲覧することです。

地方自治体によっては、いくつかのポイントで地盤調査の結果を公開しています。土地に近い資料があれば、参考になるでしょう。

例えば東京都では、「区市町村の窓口で閲覧可能な地盤調査データ」を公開しています。

とはいえ、近くの地盤調査結果が良好であったとしても、候補の土地が問題ないかは、実際に調査しないと確定しません。土地購入前に地盤の強弱について心配であれば、土地改良工事の予算として150万円程度を見込んでおくと安全です。

地盤調査の種類は3つ

地盤調査には、大きく3つの種類があります。スウェーデン式サウンディング試験、ボーリング試験、平板載荷試験です。設計者や工事施工者が、建物や土地に合った調査方法を選定します。

スウェーデン式サウンディング試験

住宅地の地盤調査に、最も採用されているのがスウェーデン式サウンディング試験です。SS試験とかSWS試験などと呼ばれています。費用は5万円程度です。

試験方法は、地盤に鉄の棒を機械で回しながら差し込み、棒の沈み方のゆるさ・硬さで、地盤の強さを判定します。一般的には、敷地の4隅と中央1箇所の合計5箇所を調査します。

スウェーデン式サウンディング試験は、半日程度で作業を終えることが出来、費用も安価なため、多くの住宅地の調査に採用されています。注意すべき点としては、地耐力は計測できますが、土質を調査することが出来ない点です。そのため、SS試験に土質調査を追加する方法を採用しても良いでしょう。

ボーリング試験

ボーリング試験は、最も基本的な試験で、小規模から大規模建築まで様々な現場に採用されています。費用は20万円程度です。

試験方法は、調査ポイントにやぐらを組み、中空鋼管を掘削しながら沈めていきます。鋼管へ打撃を与えて地盤の抵抗値(N値)を図りながら、中空鋼管の中に土を採取するので、そちらから土質を確認することが可能です。

地耐力と土質を同時に調査することが出来、信頼性の高い調査方法です。デメリットは、やぐらを組むスペースが現場に必要であったり、調査機械がSS試験に比べて大掛かりなため、費用がSS試験より高い点です。

平板載荷試験

最後に紹介するのが、平板載荷試験です。実際の地盤に平板を置いて、そこに建物重量に見合った荷重を掛けて、地盤の地耐力を計測します。費用は10万円程度です。

地盤に直接力を加えて、その反力で地盤の強さを正確に測ることができる、信頼性の高い調査方法です。調査時に騒音や振動が出にくい、比較的短時間に計測できる点もメリットです。平板載荷試験の課題は、平板付近の地耐力しか調べられず、調査できる地盤深さも浅い点です。

戸建て住宅の敷地を地盤調査する場合には、信頼性と費用を考慮すると、スウェーデン式サウンディング試験を選択することが多いです。土質調査を追加すると、より調査精度を高めることができるでしょう。

地盤調査結果をどう見ればいい?戸建住宅に必要な地耐力は20KN以上が目安

地盤の強さ(地耐力)は、「KN/㎡(1㎡あたりキロニュートン)」で表されます。数値が大きいほど、大きな荷重を受けられるので、地盤が強いと言えます。

戸建住宅に必要な地盤の地耐力は、20KN以上が目安となります。
これは建築基準法による、地耐力により基礎の形式の制限があるためです。20KN以下の地盤は杭基礎が必要になり、杭設置に費用がかかります。

地耐力 選択できる基礎形式
地耐力20KN以下 杭基礎
地耐力20KN以上30KN未満 杭基礎・ベタ基礎
地耐力30KN以上 杭基礎・ベタ基礎・布基礎

具体的に、地耐力ごとに必要な基礎方式とコストへの影響を解説します。

地耐力20KN以下の場合:杭基礎が必要になりコストへの影響も大きい

20KN未満の場合、杭を使って支持をする杭基礎にしなければなりません。地盤が弱いので、万が一地盤沈下などが起こった場合にも、地盤に寄らず杭で建物を支える必要があるためです。

杭基礎は軟弱地盤にも採用できる信頼性の高い基礎形式ですが、デメリットは費用が高いことです。戸建て住宅に採用した場合、50~100万円程度の費用がかかります。

地耐力20KN以上30KN未満の場合:比較的安価なベタ基礎も選択できる

20KN以上30KN未満の場合は、杭基礎またはベタ基礎を選択できます。ベタ基礎は、コンクリートの床を建物いっぱいに打つことで、大きな面で荷重を地盤に伝える方式です。

ベタ基礎は、現在の戸建住宅に最も多く採用される基礎方式です。標準仕様にしている設計者や工務店が多く、追加費用がかからないケースが多いです。

地耐力30KN以上の場合:比較的安価なベタ基礎も選択できる

30KN以上の地耐力が確保できた場合には、杭基礎・ベタ基礎に加えて、布基礎も選ぶことが出来ます。布基礎は、柱の下部などにだけ基礎を作る方式で、基礎以外の部分の建物床下は土のままです。

布基礎はコンクリートや鉄筋の量が少なくなるため、ベタ基礎より安価に作ることが出来ます。

上記の地耐力による基礎方式の選択は、最低限の基準になります。例えば3階建ての場合には、建物荷重が重くなるため、地盤調査の結果、平均25KNが出ていたけれど、杭基礎を推奨されることもあります。地盤調査の結果と、建物計画の両方に見合った、必要地耐力と基礎方式を選択しましょう。

地盤調査結果が悪かったときの対応方法とコストを把握しておこう

土地を購入する前には、その強度に問題がないか不安に感じるものです。しかし地盤の強度は調査をしてみないと正確には把握できない点が、問題です。

私たちがサポートしたお客様のケースをご紹介します。建物を設計している段階で、土地周辺の調査資料を収集し良好であることが分かりました。その後、設計が完了し地盤調査をしたところ改良が必要との判定となり、見込んでいた予備費から地盤改良費用を賄ったことがあります。

いくら周辺が良好でも当該地が不良であることは起こりえます。そのためにも、地盤改良費用を賄うだけの予備費(100~150万円程度)を見込んでおくと、安心できます。

土地や建物のリスクを理解して、予備費などを家づくりの予算に入れておくことが必要です。長沼アーキテクツでは、土地や建物のリスクを把握しながら、資金計画をしています。ぜひご相談ください。

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