設計料(注文住宅)とオプション業務について

設計事務所に住宅設計を依頼すると、工事費とは別に設計料がかかります。依頼する人にとって、設計料はわかりずらく、それにより依頼しにくく感じるかもしれません。

この記事では、長沼アーキテクツの注文住宅の設計料の考え方や基本業務の内容、長期優良住宅の申請などオプション業務についてご紹介します。(この記事に記載した金額はすべて税込総額表示です)

高いデザイン性の注文住宅を費用対効果高く実現する方法をお探しの方は、「注文住宅の企画・設計・インテリアデザイン」のページもあわせてご覧ください。

基本業務と設計料の決め方

長沼アーキテクツの基本業務

設計事務所の業務は「基本設計」「実施設計」「工事監理」に、建築許可を得るための「確認申請」業務が加わり、4つの業務があります。

1.基本設計とは、建物のベースを計画する段階です。敷地に対する建物の配置や、建物の平面計画(間取り)、断面計画(室内外高さ)、インフラの基本方針(水電気ガス・空調換気)などを決めます。

2.実施設計とは、基本設計で決定した計画をもとに、より具体的な仕上げや寸法、設備機器などの、工事をするための詳細を決めていきます。

3.工事監理とは、設計完了した図面一式と工事現場を照らし合わせて、設計図通りに工事が出来ているかを確かめる作業です。

4.確認申請とは、建築計画が法適合しているか、着工前に確認検査機関により審査されるものです。合格すると確認済証が発行され、晴れて着工することが出来ます。

長沼アーキテクツの基本業務では、上記の4つの業務を行っています(改修工事で不要の場合は確認申請業務を除く)。

長沼アーキテクツの設計料

私たちの注文住宅の設計料は、延床面積×㎡単価で定めており、「1㎡あたり3.0万円」としています。例えば延床面積100㎡の計画の場合、3.0万円×100㎡=300万円となります(新築住宅の最低設計料を300万円としています)。

建築士の設計料は、国から指針「設計、工事監理等に係る業務報酬基準について」が示されています。これによれば、建物の用途と難易度、建物の広さによって、必要業務量(時間)が算出され、そこに一級建築士の人件費単価をかけることで、定めています。

私たちの住宅設計料については、お客様へのわかりやすさを優先し、また過去案件の実働時間等を考慮して、「1㎡あたり3.0万円」を用いています。(事務所ビルなど住宅以外の用途の設計料には、告示の算出式を採用しています。)

設計料の支払い割合は、設計料総額を100としたときに、各フェーズの必要業務量に照らし合わせて、「基本設計:実施設計:工事監理=25:50:25」の割合で、ご請求しています。

設計に関するオプション業務について

耐震性や省エネ性に配慮した長期優良住宅や、フラット35の仕様に適合した住宅をつくりたい場合には、私たちはオプジョン業務として対応しています。

また計画地によってかかる自治体の条例や、道路セットバックの申請など、建築計画にまつわる申請等も対応することが可能です。

具体的な業務内容やメリットなどを書いていきます。

長沼アーキテクツのオプション料金表(2021年11月現在)

設計・構造計算に関するオプション業務

建物の構造や省エネ、建物高さ検討についてのオプション業務を説明します。

4号建築物の壁量計算

木造2階建てなど小規模な「4号建築物」には、壁量計算により耐震性の検討が求められます。壁量計算は、筋交いなどの耐力壁が建物にバランスよく配置計画されているかを検討するものです。

地震力や風圧力に対する耐震性を担保するために、専用ソフトで壁量計算を行います。

専用ソフトで耐力壁を入れ構造検討したものを、平面図に落とし込み、何度も再調整する業務として、16.5万円を料金として設定しています。

構造計算(許容応力度計算)

上記の「4号建築物」より大きな建物には、構造計算が求められます。構造計算は、単に筋交いが何箇所入っていれば良いというだけでなく、1本ずつの柱や梁にかかる荷重を考慮した構造計画を行います。

構造計算は、構造設計事務所へ私たちから依頼します。規模や難易度により都度見積もりとなりますが、33万円以上の料金となります。

耐震補強(設計+監理)

築年数の経つ戸建住宅の耐震性を強化するときには、耐震補強設計を行います。建物を調査し、構造的な不足箇所を発見した上で、必要な補強方法を検討します。

考え方は上記の壁量計算に近く、筋交いなどの耐力壁をバランスよく入れ、柱や梁への荷重に見合った金物を取り付けることで、新築と同等の耐震性を実現できます。

専用ソフトで検討を行い耐震補強計画を固めていく作業となり、44万円にて、補強設計と工事監理(金物等の取り付け確認等)を行っています。自治体に耐震補強の助成金があれば、その申請もサポートします。

省エネ計算(外皮計算+一次エネルギー計算)

建物の省エネ性を図るために、省エネ計算を行っています。外壁や屋根に入れる断熱材の種類や厚さを定めて断熱性を求める外皮計算と、使う給湯器や空調により必要なエネルギーを求める一次エネルギー計算を行います。

専用ソフトに使う材料や機器を入力し、その面積を算出する業務として、11万円の料金を設定しています。

天空率による設計

建物が建つ敷地には、建物高さを制限する法律がかかります。例えば、要望する部屋数を実現するために3階建てにしたいが、計画が高さ制限に当たってしまう場合に、天空率を用います。

天空率とは、簡単にいうと測定点から建物を見上げたときに見える空の割合のことで、高さ制限をクリアしている適合建築物の天空率よりも、計画建築物の天空率が大きければ、空が広く見える=高さ制限をクリアしている、とみなされる制度です。

天空率も専用ソフトに入力検討を行い、5.5万円の料金となります。

申請・助成

次に建物のスペックを証明するために必要な申請業務をご紹介します。

長期優良住宅

長期優良住宅は、耐震性と省エネ性その他の仕様をクリアした建物で、認定を受けるために申請が必要となります。住宅ローン控除額の拡大など、金銭的にもメリットが大きいものです。

長期優良住宅のメリットについては、「長期優良住宅とは?住宅ローン控除(減税)等のメリットを紹介」という記事で解説しています。

認定取得のためには様々な仕様に適合する必要があり、機器の選定や図面への表記が必要です。また耐震等級2以上を証明するための構造計算や、一定以上の省エネ性を示す省エネ計算が必要となります。各計算は、上記の計算料がかかります。

それらの計算資料と追記された図面を用意した上で、確認検査機関と協議を重ねて、認定書を取得する業務として、33万円の料金を設定しています。

認定低炭素住宅

認定低炭素住宅は、省エネ性の基準を満たした住宅です。省エネ性だけの証明を取得したい場合や、広さの基準を満たさず長期優良住宅を取得できない場合などに、認定低炭素住宅を採用することがあります。

認定低炭素住宅には、省エネ計算が必要となり、計算料が発生します。その他に、長期優良住宅と同様に、申請書類や図面作成の業務として、33万円の料金を設定しています。

フラット35適合申請

金融機関と住宅金融支援機構が提携し提供するフラット35を用いて住宅建築を行う場合、フラット35が求める仕様に適合している証明を取得する必要があります。

フラット35の仕様は独特のため、設計の初期段階でフラット35を意識した設計を行う必要があります。求められる項目が多いため、専用の仕様書を用意したり、図面追記が必要となります。

また設計段階の図面審査だけでなく、現場の検査もあり、それらの申請と検査業務として、33万円となっています。

住宅性能表示

住宅性能表示は、耐震性や省エネ性など10分野の性能を証明するものです。長期優良住宅や認定低炭素住宅に似ているのですが、住宅性能表示はあくまで建物の性能を証明しているだけなので、「等級2以上でなければならない」などの制限はありません。

例えばこの制度で耐震等級3を証明することで、地震保険の割引が適用されます。このように割引の適用のためであったり、建物の性能の証明にも用いられています。

長期優良住宅と同様に、耐震性や省エネ性の根拠として上記の計算が必要となり、さらに別途で申請書の作成業務として、16.5万円の料金を設定しています。

その他申請

建物にまつわる申請は様々なものがあります。例えば自治体が条例で定める高い建物への手続き(中高層条例)や、遺跡など文化財が発掘される可能性がある場所に建築する際の手続き(埋蔵文化財)などです。

計画敷地が該当した場合には、これらに申請し許可を得なければ確認申請が下りないため、対応することとなります。自治体により求める内容が異なるため、料金は別途お見積りとしています。

調査

建物を設計するためには、敷地の詳細な情報が必要です。ここでは敷地にまつわる調査業務について説明します。

敷地測量

敷地の測量図は建築主が準備し、設計者に提供するものとされています。しかし実際には、数十年前の古い測量図のみ残っていたり、そもそも測量図が無いケースもあります。

その場合には、私たちから土地家屋調査士等に依頼し、敷地測量図を作成します。料金は16.5万円としていますが、隣地との境界確定をしたり、敷地が広い場合には、お見積りとなります。

真北測量

敷地の北側からかかる建物高さ制限を検討する根拠には、磁北ではなく真北を用います。住宅地図の北は磁北を指すことが多く、真北資料がない場合には、現地での真北測量が必要となります。

料金は8.25万円としていますが、敷地測量する際に同時に行うことで、料金を抑えることが可能です。

地盤調査

建物の荷重を支える、強い地盤が求められます。地盤の強さを測るために、地盤調査を行います。地盤は隣接する場所で強くても数メートル離れると弱いことがあるため、建築配置計画が定まった後に、建物の4隅をピンポイントで調査します。

地盤調査会社へ調査点などを私たちから指示し、依頼します。調査料は11万円~となっており、敷地が広い場合や、4点では可否を判断しずらい場合に調査点を追加する場合などで、追加費用がかかります。

また地盤調査会社の多くは、地盤保証を用意しています。調査結果を信じて建築したが不同沈下した場合に、一定期間を保険にて保証するものです。こちらに加入する場合には、追加費用がかかります。

狭あい道路

建築する敷地は、幅4m以上の道路に接する必要があります。前面道路が4m未満の場合、道路を4mまで広げるために敷地の道路境界線をセットバックする必要があります。

このセットバック線をどこにするか自治体と協議します(狭あい道路協議)。一般的には現況測量図をもとに図面上で方針を決めた上で、自治体職員により現地確認がされて、セットバック線が決まります。

協議申請書の作成と質疑応答、現地確認などを行う業務として、11万円の料金を設定しています。

実際の設計料のイメージ

ここまで基本業務とオプション業務の内容と料金を説明してきました。次に実例を用いて、業務の内容と料金を具体的に解説します。

ケース1:構造計算と狭あい道路協議を行った戸建住宅の新築

東京都で設計した木造3階建ての注文住宅の例です。延床面積は100㎡でしたので、標準業務の設計料は、100×3万円=300万円でした。

つづいてオプション業務の追加料金について確認します。

都内では狭小地を活用するために3階建ての住宅にするケースも増えますが、3階建ての住宅には詳細な構造計算が必要になります。構造設計事務所との協働となり、オプション業務の追加料金として33万円が発生します。

敷地の測量図は建築主が準備し、設計者に提供するものですが、資料が不足する場合はオプション業務として敷地測量が発生します。また建築の計画には真北(磁石が指す北は地球の磁場の影響を受け少しずれる、参照:国土地理院)を用いますが、こちらも資料が不足する場合は真北測量が必要です。今回の事例ではいずれの資料も不足していたため、追加料金として16.5万円が発生しました。

また、前面道路の幅が4m未満だったため、区と狭あい道路協議を測量図をもとに行い、敷地セットバック線を確定させ、建築できる敷地面積もここで確定しました。狭あい道路協議申請のためのオプション業務の追加料金として、11万円となりました。

加えて、住宅を建てる地盤の強さを測るため、地盤調査が必要です。追加費用額は面積によって変動しますが、今回は11万円となりました。

以上の合計で、今回のケースでは、基本業務の設計料が308万円、オプション業務の料金合計が71.5万円となりました。

ケース1 料金一覧(税込)

設計料 300万円
構造計算 33万円
敷地測量・真北測量 16.5万円
狭あい道路協議 11万円
地盤調査 11万円
合計 371.5万円(うちオプション業務71.5万円)

ケース2:耐震補強をした築50年の戸建住宅のフルリノベーション

東京都で築50年の戸建て住宅を、耐震補強をした上でフルリノベーションした例です。延床面積は80㎡でしたので、基本業務の設計料は80×3.0=240万円となりました。

既存建物調査を行った上で、耐震補強設計を行いました。着工前の簡易的な建物調査では全箇所の柱や梁を確認できないため、建物の壁を壊して状況を再確認した上で、耐震補強設計を見直す作業がありました。耐震補強設計料が44万円でしたが、区の助成金を申請し、30万円の助成を受けることが出来ました。

また耐震補強を行ったため、耐震補強工事費への助成金として130万円を受け取ることが出来ました。これらの手続きも、私たちが行いました。

既存建物のリノベーションなので、敷地や真北測量は不要で、長期優良住宅等の申請も行いませんでした。よってこのケースでは、基本業務の設計料が240万円、オプション業務の料金が44万円でしたが、お客様は助成金160万円を受け取ることが出来ました。

耐震補強設計を行うことで、古い建物も安全になった上で、区から高額な助成金を受けることが出来、メリットが大きい結果となりました。

ケース2 料金一覧(税込)

設計料 240万円
耐震補強(設計+監理) 44万円
合計 284万円

区からの助成金(税込)

耐震補強助成金 30万円
耐震補強工事助成金 130万円
助成金合計 160万円
料金からの差額 124万円

ケース3:長期優良住宅+フラット35Sを活用したSE構法の戸建住宅の新築

埼玉県で設計した木造2階建ての戸建住宅の例です。延床面積は100㎡でしたので、100×3.0万円=300万円が基本業務の設計料でした。

お客様が高い耐震性と省エネ性を要望され、計画初期段階から長期優良住宅を取得することが決まりました。また住宅資金計画としてフラット35を用いることも決まっていました。

木造2階建ては壁量計算でも可能ですが、今回は構造計算を行い耐震等級3で計画することで長期優良住宅に適合させ、かつLDKを広い無柱空間とするためにSE構法を採用しました。SE構法の構造設計料33万円でした。

長期優良住宅の申請に必要な省エネ計算を行い、11万円の料金となりました。

構造計算と省エネ計算、その他の仕様に合わせた設計を行い、長期優良住宅を申請し、33万円の料金となりました。

長期優良住宅を取得した住宅は、より金利の低いフラット35Sを利用できます。今回はフラット35Sの適合証を取得するために申請しました。現場検査の対応も行い、33万円の料金となりました。

敷地測量や真北測量は、土地購入時に資料がありましたので、不要でした。また前面道路の幅が4m以上ありましたので、狭あい道路協議も不要でした。建物配置計画が決まった時点で、地盤調査11万円で行い、地盤保証5.5万円で付けました。

オプション業務が多かったこのケースでは、基本業務の設計料が300万円、オプション業務の料金合計が126.5万円となりました。

長期優良住宅とすることで、耐震性と省エネ性の高い建物となりました。またその認定を活用し、10年間金利の低いフラット35Sを利用することで、支払い金利を130万円安くすることができました。

ケース3 料金一覧(税込)

設計料 300万円
構造計算(SE構法) 33万円
省エネ計算 11万円
長期優良住宅申請 33万円
フラット35適合申請 33万円
地盤調査 11万円
地盤保証 5.5万円
合計 426.5万円(うちオプション業務126.5万円)

金利優遇による割引(税込)

フラット35Sによる金利優遇 130万円
料金からの差額 296.5万円

まとめ

ここまで、長沼アーキテクツの基本業務とオプション業務の内容と各料金を解説してきました。建物の設計は、形は素材など目に見える部分のデザインだけでなく、構造や省エネなど建物性能を設計したり、それをもとにした長期優良住宅などの申請もあります。

これらすべての要件をクリアして1つの建築にするため、業務は多岐にわたります。検討作業する時間もかかり、設計料も発生するのですが、私たちは建築デザインだけでなく、さまざまな対応ができますので、お客様にとっては窓口1つで済ませられるメリットがあります。

また私たちはファイナンシャルプランナーとしてお金の相談も出来ます。長期優良住宅などで適用される住宅ローン控除額の拡大や、耐震補強など自治体からの助成金を活用した資金計画を、建築デザインと連動してご提案できますので、お気軽にご相談ください。

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