設計料とは?料金の相場や業務内容、告示、見積事例(住宅等)を紹介

設計料とは、建物の設計を建築士に依頼した時に支払う費用です。ビルや工場、住宅など設計する建物の種類や面積、必要な手続きなどで設計料は変動します。

設計料は、建築士法に基づく業務報酬基準がありますが、注文住宅などの小型の建物では面積や工事費に対する割合などで、簡易で定める方法も用いられています。

この記事では、設計料の相場、設計料・監理料などに含まれる建築士の業務内容、業務報酬基準(告示98号・旧告示15号)による算出方法、実際の設計見積の項目や設計料の金額を紹介しています。

高いデザイン性の注文住宅を費用対効果高く実現する方法をお探しの方は、「注文住宅の企画・設計・インテリアデザイン」のページもあわせてご覧ください。

設計料・監理料とは?

設計料とは、お客さまの要求や条件を整理し、法令上の制約条件を調査したうえで、設計図書を作成する「設計業務」への対価です。実際の建設工事に必要となる工事費とは異なります。

監理料とは、建物の工事が設計図書のとおりに実施されているかを確認する工事監理業務に対して支払われます。設計事務所に依頼する場合、多くは設計業務と監理業務を合わせて設計監理料として扱われます。

業務報酬基準とは?

業務報酬基準とは、国土交通省が建築士法に基づいて示した「国土交通省告示第98号」(平成31年1月に告示15号から改正)における設計料の基準です。告示には強制力はありませんので、あくまでも基準として扱われます。そのため、一般的には建物の用途や面積、業務の具体的な内容によって設計料が決められます。

設計者から設計料について「告示をベースに」と説明を受けることがありますが、その際はこの告示第98号の業務報酬基準を指しています。特に、ビルや工場のような大きくて複雑な建物の設計の場合には、業務報酬基準に基づいた設計料が適用されます。注文住宅などの規模ではほとんど適用されることはありません。

業務報酬基準で示される設計料の内容とは?

業務報酬基準で示されている設計料の算出は、業務経費(直接人件費、特別経費、直接経費、間接経費)と技術料等経費(技術力への対価)の合算としています。これらの経費項目は、設計者の単価を定めるために計算され、設計者の単価と業務量の乗算で設計料が算出されます。

設計料の内訳のイメージ

経費 概要
業務経費 直接人件費 設計の業務に従事する人の人件費1日あたりの額に従事する日数を乗じた額の合計
特別経費 出張旅費など建築主の依頼に基づいて必要になる費用
直接経費 成果図書の印刷製本費や交通費など設計業務に関して直接必要になる費用
間接経費 設計事務所を管理運営するために必要な費用のうち当該業務に冠して必要になる費用
技術料等経費 設計業務で発揮される技術力、創造力などの対価として支払われる費用

設計料=設計者の単価(業務経費+技術料等経費)×業務量

業務量の設定には変動要素があります。主に建物の用途や面積によって業務量が変動し、設計料が変わります。複雑な建物や大きな建築ほど設計業務が難しくなるためです。

用途や面積による設計料の決め方の手順について、詳細は国土交通省が公開しているパンフレット(pdf)に掲載されています。


国土交通省が公開している告示第98号に関するパンフレットより(pdf)

標準業務と標準外業務の違いとは?

設計料を算出するために、業務報酬基準では業務内容を「標準業務」と「標準外業務」に分けています。通常の設計料は標準業務に対して計算され、標準外業務に対しては追加料金が発生します。

標準業務

標準業務とは、業務報酬基準において定められた一般的な設計業務を指します。業務報酬基準で示されている設計料の計算方法は、標準業務に対して設定されています。

標準業務の例

  • お客さまとの打ち合わせ
  • 設計条件の整理
  • 法令上の条件の調査・関係機関との打ち合わせ
  • 設計内容の検討
  • 設計図書の作成
  • 概算工事費の検討
  • 設計内容のお客さまへの説明

標準外業務

標準業務には含まれない業務を標準外業務と呼びます。法令・条例に基づく許認可の手続きに必要な書類の作成や手続き自体などが標準外業務に該当します。標準外業務には、設計料以外に追加料金が発生します。

標準外業務の例

  • 建築プロジェクトの企画立案、事業計画のための調査
  • 都市計画法や消防法などの法令に関する許認可申請手続き
  • 建物の防災計画の作成
  • 省エネ法に必要となる届け出
  • 長期優良住宅・フラット35・住宅性能評価などの申請手続き

標準外業務の業務内容については、一般社団法人公共建築協会が詳しくまとめています(pdf)ので、ご参照ください。

住宅の設計料の決め方とは?設計料の目安やハウスメーカーの設計料が0円の理由について解説

ここでは、注文住宅を例に、設計料の決め方と目安について解説します。注文住宅の設計料も業務報酬基準が目安になりますが、そのほかの基準が慣例になっていることがほとんどです。また、住宅の設計を依頼する会社が設計事務所か、工務店か、ハウスメーカーかによっても基準が変動します。

設計事務所に設計を依頼する場合は2つの算出方法がある

建築設計事務所の建築家に注文住宅の設計を依頼する場合、設計料は主に次の2つの方法で算出されることが慣例になっています。

総工事費の◯%で設計料を算出する場合

多くの設計事務所では、住宅を建てるために必要になる工事費を基準に設計料を算定しています。目安は工事費の約10%〜15%です。たとえば、工事費が2,000万円の住宅の設計料は200万円〜300万円が目安になります。

工事費の目安として坪単価で掲載している設計事務所や、工事費の変動に合わせて設計料の比率を細かく設定されている設計事務所もあります(参考:コンパス建築工房様の設計料についてのページ|設計料は工事費2,000万円以下の場合、工事費の10.21%で設定されています)。

工事費は、主に建物の面積に比例して変動しますが、使用する建材や設備のグレードによっても変動します。グレードの高い住宅(坪単価の高い住宅)を建てた場合、工事費から設計料の比率を算出している設計事務所の場合、設計料も高額になる可能性があります。

延べ床面積あたりの単価◯万円で設計料を算出する場合

住宅の延べ床面積(各階の床面積の合計)あたりの単価を設定している設計事務所もあります。目安は延べ床面積(㎡)×2.5万円〜3万円です。たとえば、延べ床面積100㎡の住宅の設計料は250万円〜300万円が目安になります。

延べ床面積あたりの単価は、面積の規模によって変動する設計事務所もあります(参考:長友建築研究室様の設計料についてのページ|設計料は1㎡あたり3万円で設定されています)。

国土交通省が定めている設計料の基準は、建物の用途と面積によって算出されているため、延べ床面積あたりの単価で設計料を設定している設計事務所は、より国土交通省の基準に近いと言えます。

長沼アーキテクツの注文住宅の設計料は、延べ床面積あたりの単価で定めており、「1㎡あたり3万円(税込)」としています。長沼アーキテクツの設計料の決め方について、詳細は「設計料(注文住宅)とオプション業務について」をご覧ください。

最低設計料

設計事務所では、設計料の最低金額を設定している事務所があります。狭小住宅やリノベーションなどは、工事費や延べ床面積が小さくなりますが、設計の業務量や難易度は変化しないためです。

長沼アーキテクツでは、最低設計料を300万円としています。

工務店・ハウスメーカーの設計料が無料になる理由

工務店やハウスメーカーに注文住宅を依頼した際、設計料は無料となっているか、内訳として明示されていないことがほとんどです。この場合、設計料は全体の工事費の中に含まれています。
設計業務は、建物のグレード感と費用を固めるプロセスです。工事(施工)を担当する工務店やハウスメーカーが一括で設計を担当すると、コストコントロールが甘くなる傾向にあります。

節約した設計料以上に工事費が増加してしまったり、工事費は変わらなくても、依頼主が気づかないところで仕様・品質を下げられてしまうリスクがあります。

さらに、ハウスメーカーや一部の工務店は、あらかじめ住宅の材料や構造などを型式として認定を受ける制度である型式適合認定を活用し、住宅を設計するための業務量を削減しているため、設計料として請求することが少なくなっています。型式適合認定は、将来のリフォーム・リノベーションに制約が生まれたり、工事費が高くなるリスクがあります。型式適合認定の詳しい情報については「型式適合認定とは?ハウスメーカー住宅のリフォームが難しい理由を解説」で紹介していますので、あわせてご覧ください。

住宅のオプション業務への設計料の追加料金とは?

住宅の設計に関わる、法令や条例に基づく許認可手続きなどのオプション業務(業務報酬基準における標準外業務)については、設計料とは別に追加料金が発生します。オプション業務によって、いくつかの副次的なメリットを受けることができます。

主なオプション業務は下記のとおりです。

設計・構造計算に関するオプション業務

4号建築物の壁量計算 木造2階建てなど「4号建築物」には、壁量計算により耐震性の検討が求められます
構造計算(許容応力度計算) 「4号建築物」より大きな建物には、構造計算が求められます
省エネ計算 省エネ法への適応、長期優良住宅の認定のために必要になります

申請・助成

長期優良住宅 住宅ローン控除額の拡大などのメリットを受けられる認定です
フラット35適合申請 金利が固定で個人事業主などでも借入しやすいフラット35は、適合証明申請と検査対応が必要です

調査

敷地測量 敷地の測量図がない場合に作成します
地盤調査 住宅の荷重を支える地盤の強さを測定します

注文住宅の設計料の見積事例・内訳

設計事務所に注文住宅の設計を依頼する場合の設計料の目安は、総工事費の約10%〜15%か、延べ床面積(㎡)×2.5万円〜3万円です。具体的な見積もり金額をイメージできるように、長沼アーキテクツでの事例をご紹介します。

長沼アーキテクツでは、設計料を延べ床面積(㎡)×3万円としています。

ケース1:長期優良住宅+フラット35Sを活用したSE構法の戸建住宅の場合の設計料

埼玉県で設計した木造2階建ての戸建住宅の例です。延床面積は100㎡でしたので、100×3万円=300万円が標準業務の設計料でした。

事前に、長沼アーキテクツのFP相談サービスにてファイナンシャルプランを作成し、住宅ローンの借入額等を算定していました。ファイナンシャルプランをもとに、全体予算を3,600万円(工事費3,300万円、設計料300万円)としました。

お客様が高い耐震性と省エネ性を要望され、計画の初期段階から長期優良住宅を取得することが決まりました。また住宅の資金計画としてフラット35も活用しました。長期優良住宅について詳しく知りたい方は「長期優良住宅とは?住宅ローン控除(減税)等のメリットを紹介」を、フラット35について知りたい方は「経営者がフラット35(住宅ローン)を活用。建築士でファイナンシャルプランナーの住宅のプロが解説」ご参照ください。

長期優良住宅の認定取得には、耐震等級2以上を証明するための構造計算、一定以上の省エネ性能を示す省エネ計算が必要となり、申請もオプション業務となります。

構造計算は、もっとも耐震性の高い耐震等級3を取得できるSE構法を採用しました。SE構法に適合させるための構造設計がオプション業務として発生し、追加料金は33万円となりました。省エネ計算には専用ソフトを使った算出作業が必要になるため、追加料金が11万円となります。

構造計算と省エネ計算の資料と、それらの情報を適合・追記した設計図面を用意し、確認検査機関との協議を経て、長期優良住宅の認定となります。こうした長期優良住宅の申請業務がオプション業務となり、追加料金として33万円が発生しました。

長期優良住宅を取得した住宅は、より金利の低いフラット35Sを利用できます。フラット35Sの適合証を取得するための申請と現場検査の対応を行い、33万円の追加料金となりました。

敷地測量や真北測量は、土地購入時に資料がありましたので不要でした。また前面道路の幅が4m以上ありましたので、狭あい道路協議も不要でした。建物配置計画が決まった時点で、地盤調査(追加料金11万円)と、地盤調査後に沈下した場合に保証を受けられる地盤保証の手続き(追加料金5.5万円)がオプション業務として発生しました。

オプション業務が多かったこのケースでは、基本業務の設計料が308万円、オプション業務の料金合計が126.5万円となりました。

ただし、長期優良住宅とすることで、耐震性と省エネ性の高い建物となり、またその認定を活用し、10年間金利の低いフラット35Sを利用することで、支払い金利を130万円安くすることができました。

設計料の総額としては426.5万円(工事費の12.9%)となっていますが、長期優良住宅とフラット35Sの金利優遇による割引分(130万円)を考慮すると、296.5万円(工事費の8.9%)に抑えることができました。これは一般的な設計料の目安である総工事費の約10%〜15%よりも抑えることができています。

結果として、当初の全体予算のなかで、長期優良住宅を実現することができました。

ケース1 料金一覧(税込)

設計料 300万円
構造計算(SE構法) 33万円
省エネ計算 11万円
長期優良住宅申請 33万円
フラット35適合申請 33万円
地盤調査 11万円
地盤保証 5.5万円
合計 426.5万円(うちオプション業務126.5万円)

金利優遇による割引(税込)

フラット35Sによる金利優遇 130万円
料金からの差し引き 296.5万円

ケース2:構造計算と狭あい道路協議を行った木造3階建て戸建住宅の場合の設計料

東京都で設計した木造3階建ての注文住宅の例です。延床面積は100㎡でしたので、標準業務の設計料は、100×3万円=300万円でした。

つづいてオプション業務の追加料金について確認します。

都内では狭小地を活用するために3階建ての住宅にするケースも増えますが、3階建ての住宅には詳細な構造計算が必要になります。構造設計事務所との協働となり、オプション業務の追加料金として33万円が発生します。

敷地の測量図は建築主が準備し、設計者に提供するものですが、資料が不足する場合はオプション業務として敷地測量が発生します。また建築の計画には真北(磁石が指す北は地球の磁場の影響を受け少しずれる、参照:国土地理院)を用いますが、こちらも資料が不足する場合は真北測量が必要です。今回の事例ではいずれの資料も不足していたため、追加料金として16.5万円が発生しました。

また、前面道路の幅が4m未満だったため、区と狭あい道路協議を測量図をもとに行い、敷地セットバック線を確定させ、建築できる敷地面積もここで確定しました。狭あい道路協議申請のためのオプション業務の追加料金として、11万円となりました。

加えて、住宅を建てる地盤の強さを測るため、地盤調査が必要です。追加費用額は面積によって変動しますが、今回は11万円となりました。

以上の合計で、今回のケースでは、基本業務の設計料が308万円、オプション業務の料金合計が71.5万円となりました。

ケース2 料金一覧(税込)

設計料 300万円
構造計算 33万円
敷地測量・真北測量 16.5万円
狭あい道路協議 11万円
地盤調査 11万円
合計 371.5万円(うちオプション業務71.5万円)

設計料の算出方法を理解して、適切に設計を依頼しよう

建物の設計を依頼する際に支払う設計料は、主に建物の用途と面積によって変動します。設計料の算出方法を理解したうえで、見積もりの内容を確認するようにしましょう。

  • 設計料は国土交通省の告示によって基準が示されている
  • 住宅などの小さな規模では告示の基準は適用されない
  • 設計料は建物の用途や面積によって変動する
  • 一般的な設計業務以外の業務には設計料とは別に追加料金が発生する
  • 設計事務所に注文住宅を依頼する場合、工事費と延べ床面積、2つの算出方法がある
  • 工務店やハウスメーカーに注文住宅を依頼する場合、設計料は工事費に含まれることが多い

長沼アーキテクツは、ファイナンシャルプランナーと一級建築士の資格を持つ「お金と住宅のプロ」としてさまざまなご相談をお受けしております。住宅の購入をご検討されている個人の方には、購入に際して必要になるお金やファイナンシャルプランなどについてのご相談をお受けする「FP・住宅購入相談」を行っています。法人の方で、設計料や建物の依頼方法などについて詳しく知りたい方は、「法人向け建築とお金デザイン」よりご相談ください。

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