注文住宅とは?種類、メリット・デメリット、予算・工事費の相場や実例を紹介

注文住宅とは、工務店やハウスメーカーに依頼して建てる、間取りや設備などを自由に決められる一戸建て住宅です。あらかじめ間取りやプランが決まっている建売住宅と比較して、設計の自由度などのメリットがあります。

注文住宅には、フルオーダー住宅、セミオーダー住宅、規格化住宅の3種類があり、工務店とハウスメーカーといった依頼先によって予算の相場や実現できることに違いがあります。また、適正な工事費用・予算は、注文住宅を建てる地域や世帯年収などによって変わります。

この記事では、注文住宅の3つの種類、工務店やハウスメーカーに注文住宅を依頼するメリット・デメリット、注文住宅の予算の決め方、実例をもとにした注文住宅の費用や坪単価、首都圏での注文住宅の適正予算について紹介しています。

高いデザイン性の注文住宅を費用対効果高く実現する方法をお探しの方は、「注文住宅の企画・設計・インテリアデザイン」のページもあわせてご覧ください。

注文住宅とは?

注文住宅とは、間取りや設備などを自由に決めて建てる一戸建て住宅です。所有している土地に、工務店やハウスメーカーと相談しながら建てる住宅を指します。

注文住宅の場合、建築主(依頼主、クライアント)は工務店やハウスメーカーなどの建築会社を選んで契約し、新築で住宅を建築します。自身の好みやライフスタイルに沿った住宅を実現することができます。

注文住宅と建売住宅との違いとは?

建売住宅とは、土地と建物がセットで販売される住宅を指します。分譲一戸建て住宅と呼ばれることもあります。建物は建築済みであることが多く、建築前や建築中の段階で販売される場合もありますが、いずれにしても間取りや設備などの仕様はあらかじめ決められており、変更することができません。

注文住宅と建売住宅では、主に価格帯が異なります。首都圏での購入金額の平均を比較すると、土地付き注文住宅は4,993万円、建売住宅は3,915万円となっており(住宅金融支援機構 2019年度フラット35利用者調査より)、1,078万円の差があります。建売住宅は間取りや土地があらかじめ決められているため安くなりますが、注文住宅のような自由な設計はできません。

また、注文住宅の場合は、施工会社の選定や間取りなど設計の打ち合わせが必要なため、完成・入居までに時間がかかりますが、建売住宅はすでに完成した建物と土地を購入するため、入居までの期間が短くなります。

注文住宅の種類とは?フルオーダー・セミオーダー・規格化住宅の違い

注文住宅には、大きく分けて「フルオーダー住宅」「セミオーダー住宅」「規格化住宅」の3つの種類があります。

それぞれに設計の自由度やコストなどの面でメリット・デメリットがあります。

注文住宅の種類と特徴

フルオーダー住宅 セミオーダー住宅 規格化住宅
間取り 自由に決められる 自由に決められる 決まった選択肢から選ぶ
設備 自由に決められる 一部の設備は、決まった選択肢から選ぶ 決まった選択肢から選ぶ
検討期間 長い フルオーダーより短い 短い
コスト グレードによる グレードによる 規格化により抑えられる
建物の外形 土地形状に合わせて自由に決められる 四角形を基本として、ある程度自由に決められる 製品として形が決まっている(建てようとする土地に合った製品を探す)

それぞれの特徴について紹介します。

フルオーダー住宅とは?すべてをオーダーメイドで建てる注文住宅

フルオーダー住宅とは、建物の外形、間取り、キッチンなど設備の仕様、内装や外装に使用する材料といった、住宅に関わるすべての項目をオーダーメイドで建てる注文住宅です。

建物の形状を自由に決めることができるので、台形など不整形な土地であっても、面積を有効に活用することができます。また、標準的な規格よりも大きな開口や、柱や壁のない広い空間など、デザイン性の高い住宅を実現することもできます。

フルオーダー住宅は、多くの要望を実現することができる自由度の高い設計が特長ですが、選択する項目や打ち合わせ回数が多く時間がかかるなどデメリットもあります。また、こだわりを盛り込むあまり、予算オーバーにつながる可能性も高まります。

一方、優良な工務店や建築家であれば、選択肢のおすすめを提示し、要望を正確にヒアリングすることで打ち合わせ回数を減らすなど、フルオーダー住宅のデメリットを解消することができます。優先度の低い部分からコストダウンすることで、予算オーバーを防ぐことも可能です。

フルオーダー住宅は、間取りや設備などにこだわりがあり納得いくまで自分で決めたい方、不整形の土地に合わせて面積を有効活用した住宅を建てたい方、自由に間取りを決めつつ耐震性などの性能を上げたい方、デザイン性の高い住宅を建てたい方などにおすすめです。

セミオーダー住宅とは?設備などを選択肢から選ぶ注文住宅

セミオーダー住宅とは、設備などいくつかの項目に関しては一定の選択肢の中から選択する注文住宅です。風呂やトイレなどの水回り、キッチンの設備や外壁の素材などがセミオーダーとなる傾向にあります。

セミオーダー住宅は、フルオーダー住宅と比較すると一定の制約がありますが、規格化住宅や建売住宅と比べると選択肢の幅が広がります。セミオーダー住宅であっても、基本的に間取りは自由に決めることができ、セミオーダーとなる項目についてもいくつかのグレードが用意されていることが多いので、予算や要望に合わせて選択することができます。

一部の範囲についてあらかじめ用意されたパターンの中から選択することになるため、その分の検討時間が短くなり、間取りなどの自由に決められる部分の検討に時間を集中させることができます。

セミオーダー住宅は、こだわりがあるけど入居のタイミングが決まっているなど早く住宅を建てたい方、一定以上のグレードやこだわりが実現できるよう多くの選択肢がほしい方、土地形状の制限はないので不整形な外形にする必要はないが間取りは自由に決めたい方などにおすすめです。

規格化住宅とは?間取りも設備もカタログから選ぶ注文住宅

規格化住宅とは、あらかじめ規格として決められたカタログの中から間取りや仕様を選んで決める注文住宅です。セミオーダー住宅は間取りに関しては自由に決めることができましたが、規格化住宅の場合は間取りも決められたプランの中から選択します。商品として規格が開発されているため、安定した品質管理がされています。

規格化住宅は、仕様などが規格化されているため、検討する時間が少なくなりコストが下がる傾向にあります。その分、間取りに関して自由度が低くなるため、住まいのイメージが明確にある方は条件が合わない場合もあります。

また、規格外の条件に対応することが難しいため注意が必要です。たとえば、特殊な形状や条件を持つ土地の場合は、規格化された住宅が土地に入らず、住宅を建てられない場合もあります。ほかにも、設備の選択肢が1つしかない場合などもあるので、早い段階で確認することをおすすめします。

規格化住宅は、住宅にかけられる費用は限られるが一定以上の品質の住宅を建てたい方、すべてを自分で決めるよりも選択肢の中から選ぶほうが楽だと感じる方、規格化された住宅の形状が保有している土地に合う方などにおすすめです。

注文住宅の依頼先とは?

注文住宅の依頼先は、ハウスメーカーや工務店、設計事務所(建築家)、ビルダーなどがあります。多くの方は、このうち「ハウスメーカー」か「工務店」に依頼しています。注文住宅を依頼する場合、ハウスメーカーと工務店にはそれぞれにメリットとデメリットがあるため、互いの特性を理解して、注文住宅を依頼する必要があります。建てたいと考えている住宅やライフスタイルに合わせて、選択するようにしましょう。

ハウスメーカーと工務店それぞれのメリットとデメリットをご紹介します。

ハウスメーカーで注文住宅を建てるメリット・デメリットを解説

ハウスメーカーとは、工業化・規格化によって注文住宅の大量生産を全国規模で展開している会社です。全国に支社・支店など営業拠点があり、住宅展示場でモデルハウスの見学会を行っています。

ここでは、ハウスメーカーに注文住宅を依頼するメリットとデメリットを紹介します。

ハウスメーカーに注文住宅を依頼するメリット

メリット1:品質が安定し、予算・価格帯に応じたラインナップがある

ハウスメーカーは、建築部材の多くを工場内で生産し、一つひとつの部材を規格化しているため、品質が均一で安定していることが特徴です。

高い耐震性能をうたうハウスメーカーでは、大地震を想定した構造実験をクリアした高性能な住宅を、高度な品質管理体制のもとで生産しています。そのため、技術力によって品質が左右される工務店と比べ、安定した品質の注文住宅の提供を可能にしています。

また、ハウスメーカーでは主にあらかじめ決められたカタログの中から間取りや仕様を選択するため、価格帯に応じたカタログのラインナップを揃えていることが多く、予算に合わせて注文住宅を建てることができます。

ハウスメーカーの中には、三菱地所ホームさまの「自由設計」積水ハウスさまの「邸別自由設計」のように、自由に間取りをつくることができる自由設計型のプランを用意している会社もあります。高価格になりますが、より自由な注文住宅を建てることも可能です。

高品質な住宅を、予算や価格帯に応じて選べることが、ハウスメーカーの注文住宅の特長です。

自由設計型のハウスメーカーの例(三菱地所ホームさま)

メリット2:資金計画から引渡しまで効率的なサポートが受けられる

ハウスメーカーは、注文住宅を全国規模で展開している大きな企業が多く、住宅購入を支えるさまざまな部署が設けられています。土地探しや土地の調査のほか、不動産売却などのサポートを提供しているハウスメーカーもあるほか、ファイナンシャル・プランナーが在籍していることも多く、資金計画の相談も受け付けていることがあります。

そのほかにも、住友林業さまの「ビッグフレーム構法(BF構法)」のようなハウスメーカーが独自に開発した構法や設備の活用のほか、三井ホームさまの売却時の買取保証、50年以上の長期保証、定期点検など、アフターメンテナンス体制も整えられている傾向にあります。保証に関しては条件や有償になる可能性もあるので、事前に確認するようにしましょう。

ハウスメーカーでは、注文住宅の建築検討時の相談から引き渡し、完成後に至るまで、安定したサービスを受けることが可能です。

メリット3:モデルルームやカタログを通じて、完成形をイメージしやすい

多くのハウスメーカーは、全国に住宅展示場を設け、モデルルームやモデルハウスを公開しています。規格化された住宅や設備を実際に見学することができるので、商品を安心して選ぶことが可能です。

近年では、三井ホームさまのバーチャルモデルハウス「MITSUI HOME WORLD」や、住友林業さまの家づくりを学ぶ「MYHOME PARK」など、自宅からも注文住宅の内容をイメージすることができるWEBコンテンツなどが増えています。

また、ハウスメーカーではカタログも充実しているため、複数の間取りや設備を比較しながら、完成形をイメージすることができます。

ハウスメーカーに注文住宅を依頼するデメリット

デメリット1:不整形な土地への建築などの実現が難しい

多くのハウスメーカーの注文住宅は、間取りや設備などを規格化しているため、基本的に四角形を基準とした形状となり、狭小地や不整形な土地形状に合わせた形の住宅が実現できない場合があります。また、土地が三角形や台形など不整形な場合は面積を有効に活用することができません。

ただし、自由設計型のプランを用意しているハウスメーカーでは、要望や土地形状に合わせて住宅の形状を変えることができます。その分コストが上がりますので、どこまで変更が可能か、どの程度コストが必要かなどは確認するようにしましょう。

デメリット2:フルオーダーでも制限があり、メリットが少なくなる

ハウスメーカーの中には、フルオーダーをうたった「自由設計型」のプランを用意している会社がありますが、その場合でも選択できる設備などには制限があります。

ハウスメーカーによっては、自社の規格外の住宅を設計・販売する部署を持っている会社もありますが、規格から外れるため大幅にコストが上がり、規格化や標準化による費用対効果を高めるメリットは少なくなります。

また、ハウスメーカーは規格化によって住宅の品質を安定化と大量生産を実現しているため、規格外の設計や設備とした場合、安定した品質や工期短縮などのメリットも受けられなくなる可能性があります。

デメリット3:型式適合認定により、リフォーム時の制約の影響が大きい

「型式適合認定」とは、住宅の材料や構造などについて事前に認定を受け規格化することで、個々の住宅の確認や検査のコストを削減することができる制度です。ハウスメーカーの住宅の多くは、この「型式適合認定」という制度を採用しています。

型式適合認定を受けたハウスメーカーの注文住宅は、品質の向上や均一化、建設費の低価格化などのメリットもある一方、将来的なリフォームに関してはデメリットがあります。

住宅が受けた型式適合認定の内容は、その住宅を建てたハウスメーカーは把握していますが、一般には公開されていません。そのため、住宅の増改築や改修をする場合、一般的な工務店では建築確認を取るのが難しく、実質的に新築時に依頼したハウスメーカーにしか頼めない仕組みになっています。

リフォームの依頼先が限定されることで、小規模な工務店などとの価格競争がなくなるため、増改築の費用が割高になる傾向があります。

さらに、長期優良住宅や耐震等級3などの高品質で長く住むことが前提の住宅の場合、ライフステージの変化に応じて改修が必要になりますが、ハウスメーカーの住宅では型式適合認定の範囲内のリフォームしかできないため、将来的に必要となる間取りの変更などに制約が発生する場合があります。

「型式適合認定とは?ハウスメーカー住宅がリフォームが難しい理由を解説」では、ハウスメーカーの型式適合認定が原因でリフォームを断念した事例などを紹介していますので、合わせてご覧ください。

工務店で注文住宅を建てるメリット・デメリットを解説

工務店とは、戸建住宅などの建物の工事を行う、地域密着型の建設会社です。ハウスメーカーと比較して狭いエリアを対象にしています。多くの工務店は、間取りやデザインの自由度が高い、フルオーダー住宅やセミオーダー住宅を扱っています。

工務店に注文住宅を依頼する際、住宅の設計を自社の建築士が行う場合と、提携する設計事務所の建築家が行う場合に分かれます。

ここでは、工務店に注文住宅を依頼するメリットとデメリットを紹介します。

工務店に注文住宅を依頼するメリット

メリット1:同じ性能・デザインなら、ハウスメーカーより安く実現できる

ハウスメーカーは、住宅展示場の運営や、テレビCMの活用など、多くの広告費をかけて宣伝や営業をしています。これらの費用は、そのまま建築費に上乗せされます。

工務店の場合、狭い範囲で営業を行っているため、多額の広告費をかけずに主に口コミなどで広報しています。広告費が上乗せされないので、同じ性能・デザインであれば、工務店のほうが安く実現することができます。

また、工務店に注文住宅を依頼する場合は、要望や予算に合わせて設備のグレードやスペックを選ぶことができるため、優先度の低い部分からコストダウンできることもメリットです。決められた組み合わせから選ぶハウスメーカーと比較して、必要でない部分をカットすることができるという面からも、工務店に依頼する注文住宅は自由度が高いと言えます。

メリット2:金物工法などを活用すれば、高品質な建物を実現できる

在来軸組工法など、伝統的な木造建築を建設している工務店もありますが、建築部材の接合部に専用の金物を使用した金物工法などを活用すれば、より高品質な住宅を実現することができます。

ストローグ金物」は、接合部の合理化と施工性の向上を可能にした金物で、従来の木造では実現できなかった大空間や大開口を実現することができます。

「SE構法」は、株式会社エヌ・シー・エヌが開発したSE金物を使用した構法で、高い耐震性能を持ち、通常の木造住宅やハウスメーカーの住宅と比較してより広い空間を実現できるなど、高品質で自由度の高い注文住宅の建設が可能です。詳しくは「SE構法(SE工法)とは?耐震性能や長期優良住宅、おすすめの工務店を紹介」をご参照ください。

SE構法の工事現場の様子 SE構法で使用される木材
SE構法の住宅を建設している様子。金物を使用することで耐震性能と自由度の高い注文住宅の建設を実現する(長沼アーキテクツ撮影)

メリット3:不整形な土地形状でも、自由度の高い間取りを実現できる

工務店に依頼する場合は、間取りや建物の外形を自由に決めることができるので、不整形な土地形状の土地であっても住宅を建てることができます。ハウスメーカーに依頼する注文住宅の形状は、四角形を基準にしているため、不整形な土地に合わせた住宅を建てることが難しくなります。

工務店と自由度の高い家づくりができれば、土地形状に合わせた間取りの設計や、斜めになった壁面には造り付けの家具を設置するなど、不整形な土地を有効に活用することができます。

工務店に注文住宅を依頼するデメリット

デメリット1:技術力のある優良工務店を探す・出会うのが難しい

工務店に注文住宅を依頼する場合、品質は工務店の技術力に左右されます。

高品質な住宅を高い技術力で実現する工務店を選びたいですが、工務店は数が多く、クオリティにはバラツキがあります。また、多くの工務店は広告費にあまりお金を使わないため、発信されている情報が限られ、優良な工務店に出会うことはとても大変になっています。

技術力のある優良な工務店を見分ける方法は難しいのですが、信頼できる工務店を判断する基準を「信頼できる工務店の選び方とは?規模や事例、技術力、費用など注文住宅に強い地元工務店を見分ける方法」で紹介していますので、ぜひご参照ください。

デメリット2:モデルルームなどで、事前にイメージを掴むのが難しい

工務店の多くは、ハウスメーカーのような住宅展示場を持っておらず、モデルルームなどを見学する機会が少ないため、事前に住宅の完成イメージを掴むことが難しい傾向にあります。

しかし、模型や3Dモデル(CGパース)など、どのような住宅なのかイメージするためのツールを提供してくれる工務店もあります。中には株式会社小嶋工務店さまのようなモデルルームを公開している工務店や、株式会社ベガハウスさまのような実際にお客さまが住む注文住宅の見学会を実施している工務店もあります。

工務店に注文住宅を依頼する場合は、完成形のイメージを共有する方法やツールについて事前に確認すると良いでしょう。

デメリット3:メリットを最大化するために、情報収集が必要

工務店に注文住宅を依頼する場合、自由に決められる反面、それだけ選択・決断する機会が増えます。上述した工務店に注文住宅を依頼する際のメリットを増やし、デメリットを減らすためには、それだけたくさんの情報収集が必要になります。

住宅に特別な要望がない、すべてを自分で決めるよりも選択肢の中から選ぶほうが楽だと感じる場合は、ハウスメーカーに注文住宅を依頼する選択肢もあります。

注文住宅の予算の決め方は?世帯年収別の予算の相場を紹介

注文住宅の適正な予算は、住宅を建てる地域や、世帯年収などによって変わります。住宅金融支援機構の調査では、首都圏での年収に対する住宅購入価格の比率(年収倍率)は、注文住宅の場合は6.6倍、土地付き注文住宅の場合は7.7倍となっています(住宅金融支援機構 2019年度フラット35利用者調査より)。年収ごとに必要となる住宅購入予算を算出すると、次のようになります。

世帯年収 注文住宅の購入予算(年収の6.6倍) 土地付き注文住宅の購入予算(年収の7.7倍)
400万円 2,640万円 3,080万円
600万円 3,960万円 4,620万円
800万円 5,280万円 6,160万円
1,000万円 6,600万円 7,700万円
1,200万円 7,920万円 9,240万円
1,500万円 9,900万円 1億1,550万円
2,000万円 1億3,200万円 1億5,400万円

住宅金融支援機構 2019年度フラット35利用者調査を元に長沼アーキテクツが作成

この住宅金融支援機構の調査では、首都圏での注文住宅の購入予算の平均は3,772万円、土地付き注文住宅の場合は4,993万円となっています。注文住宅を建てるためには、世帯年収が約600~800万円必要であることが目安になります。

住宅金融支援機構の調査による年収倍率の平均(6.6〜7.7倍)は、ファイナンシャルプランナー(FP)としてお客さまの資金計画を立てているプロの目線からは、やや高いと感じます。経験上、無理なく返済できる借入金額は、世帯年収の約6倍です。ただし、近年は都心部の住宅価格が高騰しているため、世帯年収の6倍では注文住宅の購入が難しいケースも増えています。事前にプロのFPに相談して、無理のない借入金額と返済プランを計画すると良いでしょう。

実例紹介:東京・埼玉・神奈川の注文住宅の予算・費用・坪単価

長沼アーキテクツでは、さまざまなご予算、ご要望をお持ちのお客さまの注文住宅を設計してきました。ここでは、実際の事例をもとに、首都圏で注文住宅を建設するために必要な費用を、実現したお客さまのこだわりや住宅の特徴と合わせてご紹介します。

なお、今回ご紹介する事例はすべて、長沼アーキテクツが設計し、工務店が施工を行なった、フルオーダー住宅です。金額は概算です。

建設地 世帯年収 予算・工事費 坪単価 特徴・こだわり
埼玉県狭山市 600万円 3,000万円 90万円 SE構法、耐震等級3、長期優良住宅、フラット35S 金利Aプラン、5.4m角無柱空間
東京都杉並区 1,000万円 3,500万円 95万円 半地下(音楽室)、スキップフロア、SE構法、耐震等級3、断熱等級4、鉄骨階段、ワンルーム的つながり空間
東京都八王子市 1,000万円 3,500万円 90万円 SE構法、耐震等級3、長期優良住宅、和室、書斎、ウッドデッキ
東京都目黒区 1,500万円 3,700万円 90万円 半地下、ビルトインガレージ、ルーフバルコニー、LDK吹き抜け、ワークスペース
東京都世田谷区 2,500万円 6,700万円 160万円 地下室、中庭+プール、造作浴室、オーダーキッチン+業務用コンロ、吹き抜け、ワークスペース、ルーフバルコニー
東京都中央区 3,000万円 7,500万円 110万円 SE構法、耐火木造、長期優良住宅、広い玄関ホール、書斎+打ち合わせスペース、ルーフバルコニー、ホームエレベーター(将来設置)

基本的に坪単価90万円〜100万円が相場となり、例外的に東京都中央区の住宅が坪単価110万円、東京都世田谷区の住宅が坪単価160万円となっています。東京都中央区の住宅は「耐火木造」のため、東京都世田谷区の住宅は「地下室」のため、それぞれ坪単価が上がっています。

これらの住宅のうち、特に特徴的なこだわりを実現された事例を紹介します。

埼玉県狭山市の事例

埼玉県狭山市で注文住宅を建てられたお客さまは、世帯収入が600万円のご家庭です。当時住んでいたマンションが手狭だったので、個室と収納スペースを確保するために戸建て住宅へ住み替えたいというご要望でした。

2階には子ども室と主寝室を希望され、子どもが2名でしたので、子ども室は将来的には2つに区切られるよう工夫しました。また1階は大きなリビングスペースとするため、SE構法を採用することで、柱の無い広い空間を実現しました。

SE構法の採用と合わせて、耐震性と断熱性の性能を上げ、耐震等級3、長期優良住宅の認定を取得しました。高性能化によって建設費は上がりますが、これらの認定により、住宅ローン控除の優遇や、不動産取得税の優遇などを受けることができ、費用対効果の高い住宅を実現できました。詳しくは「長期優良住宅とは?住宅ローン控除(減税)等のメリットを紹介」で解説しています。

耐震性など住宅性能の向上のために費用が必要でしたが、設備や内外装のグレードを調整することで、工事費は3,000万円、坪単価は90万円で、お客さまのご要望を実現することができました。

建設地 世帯年収 予算・工事費 坪単価 特徴・こだわり
埼玉県狭山市 600万円 3,000万円 90万円 SE構法、耐震等級3、長期優良住宅、フラット35S 金利Aプラン、5.4m角無柱空間

 
埼玉県狭山市の注文住宅(左:1階リビング、右:2階寝室)

東京都杉並区の事例

世帯収入1,000万円のお客さまが、東京都杉並区で注文住宅を建てられた事例です。部屋数のご要望が多かったのですが、狭小地かつ高さ制限が厳しいという土地条件がありました。

土地の条件を解決しつつ、部屋数を確保するため、半地下を設けることで高さを抑え、スキップフロアによって希望された部屋数の確保を実現しました。また、家族の気配をなるべく感じられるような空間構成を要望されたため、スキップフロアとなっている階段部分を吹き抜けとすることで、家全体が上階までワンルームのようにつながった空間としました。

地下室を設けた影響で、工事費は3,500万円となりましたが、設備などのグレードやスペックを調整することで、坪単価は95万円に抑えつつ、予算内ですべてのご要望を実現することができました。

建設地 世帯年収 予算・工事費 坪単価 特徴・こだわり
東京都杉並区 1,000万円 3,500万円 95万円 半地下(音楽室)、スキップフロア、SE構法、耐震等級3、断熱等級4、鉄骨階段、ワンルーム的つながり空間

東京都杉並区の注文住宅(左:スキップフロア、右:玄関から地下室に降りる階段)

東京都中央区の事例

東京都中央区で注文住宅を建てられたお客さまは、世帯収入が3,000万円のご家庭で、将来を見越した住宅の計画をご希望されていました。

要望された部屋のスペースが広く3階建てでないと土地に収まらないこと、また土地が防火地域にあることから、耐火木造による建設としました。また、1階にお仕事のための広いスペースをご希望されたため、SE構法を採用することで柱のない空間を実現しています。

加えて、将来的にホームエレベーターの設置を希望されたため、エレベーターを設置するための広い吹き抜け空間を実現しました。

耐火木造のため、坪単価が上がり110万円、工事費は7,500万円となりました。

建設地 世帯年収 予算・工事費 坪単価 特徴・こだわり
東京都中央区 3,000万円 7,500万円 110万円 SE構法、耐火木造、長期優良住宅、広い玄関ホール、書斎+打ち合わせスペース、ルーフバルコニー、ホームエレベーター(将来設置)

 
東京都中央区の注文住宅(左:リビングダイニング、右:書斎兼打ち合わせスペース)

首都圏でのフルオーダーの注文住宅での適正予算は3000万円から

注文住宅・自由設計のメリットは、要望に合わせて自由度の高い設計を実現できることにあります。間取りだけでなく、設備のグレードやスペックなども自由に決めることができます。

こうした注文住宅のメリットを十分に受けるためには、一定以上の予算が必要になります。

上記でご紹介した長沼アーキテクツの過去の事例から考えると、首都圏でフルオーダーの注文住宅をある程度のグレードで建築する場合の適正な予算は、坪単価90万円、外構工事も含めると坪100万円からが適正です。一戸建て住宅ではおおよそ30坪の面積が必要となりますので、工事費は約3,000万円からが適正予算となります。

坪単価 土地面積 工事費
100万円(建物90万円+外構10万円)〜 30坪(約100㎡)〜 3,000万円〜

さらに耐震等級3や長期優良住宅の認定の取得まで行った高品質な注文住宅を建てる場合は、建物の坪単価が95万円、工事費3,500〜4,000万円が適正予算となります。費用は高くなりますが、住宅ローン控除の拡充や地震保険料の割引などの優遇が受けられるため、500万円程度の金銭的なメリットが得られます。

住宅性能向上にも適正に費用をかけることで、長期優良住宅取得による住宅ローン控除の拡充などのメリットが最大化できます。詳しくは「長期優良住宅とは?住宅ローン控除(減税)等のメリットを紹介」を参照ください。

長沼アーキテクツでは、高品質で費用対効果が高く、自由設計のメリットを活かした注文住宅を、技術力があり信頼できる優良工務店と協働して実現しています。詳しくは「注文住宅の資産価値をあげるには?工務店と設計事務所を活用して費用対効果を最大化する方法」を参照ください。

注文住宅のメリットをうまく活用して理想に沿った住宅を実現するには

理想に沿った住まいを実現するには、フルオーダーや規格化住宅といった注文住宅の種類や特長のほか、ハウスメーカーや工務店など依頼先の得意分野を抑えることが重要です。この記事のポイントは以下の通りです。

  • 注文住宅はフルオーダー住宅、セミオーダー住宅、規格化住宅の3種類に大きく分かれる
  • フルオーダーの注文住宅はこだわりのある方、不整形な土地を所有している方にオススメ
  • ハウスメーカーは規格化によって品質が高く安定しており、工期や打合せの時間が短くて済む
  • 工務店は不整形な土地にも対応でき、フルオーダーやセミオーダーの注文住宅が実現できる
  • 自由設計(フルオーダー)住宅のメリットを最大化する適正予算は3,000万円から
  • 長期優良住宅は住宅性能向上に費用が必要だが、住宅ローン控除の拡充など金銭的なメリットも大きい

長沼アーキテクツは、ファイナンシャルプランナーの立場から資金面の不安を解消し、建築家の立場から注文住宅の家づくりにおけるあらゆる課題を解決する設計事務所です。注文住宅の予算に関する相談や、信頼できる工務店の探し方などをご紹介する、FP相談サービスをご用意しています。注文住宅の購入を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

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