東京都杉並区の狭小地に4LDKと駐車スペースを確保した住宅です。「他の設計会社さんで納得のいくプランを提案してもらえなかった」ということで、ご相談いただきました。主なご相談の内容は以下の通りです。
・土地面積:約60㎡(いわゆる狭小地)
・重視するポイント:お子様への目が届く間取り
・ご希望の部屋数:4LDK+駐車スペース
狭小地に4LDKと駐車スペースを確保するのは、一般的に難しいとされています。今回は間取りと構造、そして階段を工夫することで耐震性を確保しつつ、ご要望を実現しました。
このプロジェクトのポイント
POINT01子どもに目が届くような家にするための工夫
お客様がもっとも大切に考えていたのが、お子様の様子をできるだけ感じられることです。たとえばキッチンで夕食の準備をしているときでも、別の部屋にいるお子様がなにをしているのかがなんとなくわかる……。家族の存在が感じられる、そんな間取りをご希望になっていました。
このご希望を叶えるために採用したのが、スキップフロアです。スキップフロアとは、たとえば家を北と南の半分ずつに分けたとき、北側と南側のフロアの高さがズレている間取りのことです。一般的な家のフロアから天井までの高さは約2.4m。フロアの半分を約1.2m上げることで、互い違いのフロア構造にします。フロアとフロアが天井で仕切られていないため、家全体を大きな空間にできるのがメリットです。
ただ、スキップフロアにするだけでは、お子様に目が行き届くような家にはなりません。そこで階段に2つの工夫を凝らしました。
まずは蹴込み板がなく向こう側が見える「スケルトン階段」を採用すること。そして、家の中央に階段を配置して大きな吹き抜けのような空間を設けたことです。こうすることで横にも縦にも視界が抜け、どこにいてもお子様の様子がなんとなく感じられる家を実現しました。
POINT02工務店を交えて設計をすることで予算オーバーにならないよう配慮
この住宅のお客様には、もともと別の設計事務所と数か月かけて家づくりを進めていたものの、大幅な予算オーバーによって断念してしまった経緯があります。その原因となったのは、家づくりの慣習です。
注文住宅の建築は一般的に、設計事務所がお客様と打ち合わせを重ねて設計を決めてから、工務店に工事費の見積もりを依頼する流れで進みます。そのため、住みたい家のイメージ通り自由に設計したあとで、実は予算内で建てられないとわかることがよくあるのです。お客様が別の設計事務所との家づくりをあきらめた理由も、この慣習によるものでした。
そこでこの住宅の設計は、お客様を紹介してくださった工務店様にも打ち合わせに参加していただき、アイディアが出るたびに工事費を細かく計算。予算を大きく超過しないよう細心の注意を払いながら設計を進めました。この方法によって、お客様の満足いく家を予算内で建てることができました。
POINT03「耐震等級3&高い省エネ性能」で補助金の対象となる住宅を設計
耐震等級と省エネ性能の高さも重視しました。今回の住宅で採用したスキップフロアには、構造的に耐震性が低くなるデメリットがあります。このデメリットを補うために選択したのが「木造SE構法」です。
木造SE構法は、柱と梁の接合に特殊な金属を用いる方法。自由度が高く、耐久性も高いため、家全体が大きな空間になるスキップフロアの家に向いています。ただ、木造SE構法は認定を取得している工務店のみが施工できるもので、その数は全国で531社しかありません(2020年12月現在)。
今回の住宅ではこの木造SE構法を選択したことで、国が定める耐震性の基準でもっともグレードの高い「耐震等級3」に認定されました。
さらに、省エネ性能も高めました。一般的な住宅は、柱と柱の間に断熱材を入れる「充填断熱」か、家全体を断熱材で包み込むような「外張り断熱」のどちらかを採用しています。この住宅では「充填断熱」と「外張り断熱」の両方を採用。また、断熱材自体に高性能なものを選択することで、高い省エネ性を確保しました。
こうして耐震性と省エネ性を高めたことで性能向上計画認定を取得、地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けました。金額としては100万円が現金で補助される事業ですので、お客様の経済的な負担は大きく軽減されました。
基本情報
- 建築主
- 個人(ご夫婦+お子様2人)
- 資金
- 建物3780万円
- 所在地
- 東京都杉並区
- 用途
- 専用住宅
- 仕様
- 木造(SE構法)地上3階建て
- 敷地面積
- 69.39㎡
- 延床面積
- 122.91㎡
プロジェクト体制
- 設計・監理
- 長沼アーキテクツ株式会社
- 工事
- 株式会社印南建設